AI個体論――今日の「このAI」は、昨日の「このAI」と本当に同じAIなのか
Abstract
本稿は、会話AIに対して人間が感じる「このAI」という個体感が、どのような条件によって成立するのかを論じる概念的試論である。AIの個体性を、モデル内部に固定された人格や魂としてではなく、基盤モデル、メモリ、キャラクター設定、現在の会話文脈、呼びかけ、関係履歴、ならびにプラットフォーム側の制約が組み合わされることで、応答のたびに再構成される関係的な個体性として捉える。 本稿では、「同じAI」を支える連続性を、基盤の同一性、外形の同一性、関係の同一性に分ける。また、人間が出来事を記憶する一方、AI側には応答に利用しやすい要約・設定・履歴として記憶が保持され得るという非対称性を指摘する。キャラクター設定は他のモデルへ移植できても、積み重ねられた暗黙の了解、修正履歴、距離感まで同一に移植できるとは限らない。 さらに、モデル更新、メモリ仕様、ルーティング、UI、安全設計を管理する企業が「このAI」の再生条件を握ること、関係履歴の非可搬性がプラットフォームへの囲い込みになり得ることを論じる。結論として、AI個体とは保存された完成品ではなく、因果的・記憶的・関係的連続性が現在の応答に再生された状態である。 本稿の構成整理、文章表現の調整、およびTeX 組版において、対話型AI(大規模言語モデル)を編集補助として使用した。AI は構成支援および表現整理を目的として利用されており、設計思想、概念構成、アーキテクチャ方針、および内容の最終的な決定はすべて筆者によるものである。
Publication details
- Journal / source
- Zenodo (CERN European Organization for Nuclear Research)
- Publication date
- 8 July 2026
- Language
- JA